2020年シーズンから、2006年シーズン以来の14年振りに古巣埼玉西武ライオンズに復帰した松坂大輔。私がライオンズファンになりたての頃に松坂が入団してきたので、いちファンの私にとってもとても感慨深い出来事です。
そんな松坂ですが、日本復帰してからは周囲の期待を裏切り続け、年俸に見合った活躍ができなかったことから、多くのアンチを生んでしまったのも事実です。
今回は、松坂の日本復帰後の動きを振り返ってみたいと思います。
2015年
2014年シーズンはニューヨークメッツで登板していた松坂ですが、34試合の登板で3勝3敗1セーブ3ホールド防御率3.89という成績でした。このうちリリーフでの登板が25試合と大半を占めたことで、先発志向の強い松坂はNPB復帰を探ることになり、2014年12月、福岡ソフトバンクホークスと3年12億円の契約を結び、NPBに復帰することが決まりました。
復帰時には高校時代を過ごしてドラフトでも獲得を狙った横浜DeNAベイスターズも獲得を目指していたと報道されていましたが、資金面やチーム力からホークス入団となりました。そのとき、埼玉西武ライオンズは、報道で名前が挙がったことはありましたが、実際に獲得に動いてはいなかったと言われています。
かくしてホークスに入団した松坂ですが、この当時は、メジャーでの晩年はあまり良い成績が残せていなくても、日本でならまだやれるという声が多かったように思います。
最初の春季キャンプもA班入りして順調かと思われましたが、マメの影響もありキャンプ後半にブルペンに入れなかったところから暗雲が立ち込めます。オープン戦3戦目となった6回4安打3失点とまずまずに見えましたが、その後インフルエンザにかかり、2軍調整することになります。
その後、筋肉疲労からノースロー調整を続けていましたが、練習再開した際の記事に、「肩に緩みがある」と言っています。*1後に中日ドラゴンズに移籍して復活した際に、「先生が肩をはめてくれた」ことで違和感がなくなったことで、また投げられるようになったと言いていることから、ホークスにいた3年間はずっと同じ肩の不調に悩まされてきたことが伺えます。*2
4月後半にキャッチボールから再開し、5月中旬にブルペン入り、20日にはウエスタンで実戦復帰しますが、再度違和感のため実戦から遠ざかります。そして8月、肩の手術をすることが発表されました。*3
結局復帰1年目の2015年シーズンは、2軍戦1試合の登板で終わることになってしましました。なお、この年のホークスは、柳田のトリプルスリーの活躍などもあり、独走でパリーグ優勝し、日本一にもなっています。
2016年
ホークス2年目となった2016年、春季キャンプはマメがつぶれるなどのアクシデントがありつつも、ブルペン入りするなど、順調な様子が見られました。3月には実戦でも登板し、11日に1軍に合流してオープン戦にも登板しましたが、調子が上がらず開幕1軍は逃します。
ファームでの登板を重ねますが、調子は安定せず、投げた後に検査を受けることも多く、ケガへの不安を抱えたままの調整となっていたことがうかがえます。5月に投げた後はまた実戦から離れ、8月に復帰しました。9月にはファームながら5回を投げて”日本復帰後初勝利”を上げると、10月2日のシーズン最終戦の楽天ゴールデンイーグルス戦で初の1軍登板を果たします。
ホークスが優勝を逃すことが決定してしまったことによって回ってきた登板機会でしたが、松坂にとってはNPB復帰後初登板であり、多くのファンが注目する試合となりました。しかし結果は1回3安打4四死球5失点(自責点2)と、散々なものとなりました。3年契約の途中なので、また来年ファームから頑張るという言葉を残した松坂でしたが、結果に見合わない高額契約を結んでいることもあって、バッシングはだんだんと強くなっていきました。
オフにはプエルトリコで開催されるウインターリーグに志願して参加し、復活にかける意気込みは感じられますが、その意気込みは報われず、翌2017年も思い通りに行かないシーズンとなってしまします。
2017年
結局2017年も、前の2年間と同様な1年間となってしまいました。
オープン戦では3試合目となった古巣ライオンズ戦で右足内転筋を負傷し離脱しますが、4試合目のカープ戦では7回無失点と好投します。開幕ローテ入りは逃したものの、4月15日オリックスバファローズ戦に登板が内定するも、右肩痛によって登板回避となります。*4
結局2軍戦でも登板がないまま、2017年シーズンが終わり、ホークスでの3年契約は1回のみの登板で終了となってしまいました。
この頃にはほとんど全てのファンは、「松坂はもう終わった、引退だ」と思っていたことでしょう。しかし、本人の中では良くなってきているという実感があったのか、引退へは踏み切れないでいました。そんな中、ホークスは育成契約での契約を提示し、リハビリをして言ってはどうかという契約を提示したようです。
3年間で登板は1回のみの高齢選手ということを考えると、契約更改されことも危ぶまれるなか、ホークスはホークスなりに松坂をリスペクトした契約を提示したと言えます。実際、ホークスはそれ以前にも、かつてのホークスのエースであり松坂とも投げ合った斉藤和巳に対して、選手登録ではなくリハビリ担当コーチという職を与えつつ、復帰に向けたリハビリをさせるという契約をした前例がありました。
一方で、育成契約は1軍の試合に出ることもできない限られた契約であることから、このような育成契約の使い方は賛否もあるところです。しかし、この松坂の例では、まちがいなく戦力外通告を受けるであろう成績の選手に対する契約であったため、ホークスの対応に好意的な記事が多くあったように思います。
一方で、そんな“温情契約”を拒否した松坂は、さらなるバッシングを浴びることになります。そして、そんな状況のなか声をかけたのが、かつてのライオンズ時代の大先輩であるデニー友利と、森繁和がいる中日ドラゴンズでした。
2018年
2017年末に、中日ドラゴンズで入団テストを行うことが発表されました。ほとんどの人が松坂が投げることすらままならないと認識しているなか、2018年1月にテストは行われました。そして即入団決定。
実際、中日球団としても、戦力として獲得した可能性は低いでしょう。一番の理由は、5年連続Bクラスに沈んでいたチームの広告塔としてでしょう。予想通り、1軍選手の最低年俸である1,500万円で契約しますが、グッズは飛ぶように売れました。*5
そして周囲の予想に反して、1軍で先発登板を果たすことになります。
松坂が復活した理由は、やはり右肩の不安が解消したことに尽きます。あらゆる病院で肩の状態を検査してもらっていたなかで、とある先生から肩をはめてもらったと言います。前述のとおり、2015年に日本に復帰してから(あるいはMLBにいた時から)悩まされ続けた肩痛が解消し、試合で思いっきり投げられるイメージが復活したのでしょう。
結果、11試合に登板し6勝4敗3.74と、谷間としてはまずまずの成績を残し、カムバック賞を獲得しました。また、オフには年俸1,500万円から6,000万円に大幅昇給を勝ち取り、復活を印象付けました。
2019年
しかし2019年、再度怪我に悩まされることになります。2月春季キャンプ中のこと、ファンが右腕をひっぱり、それによって右肩を痛めたと発表されました。ファンと選手の距離が近すぎることへの問題提起へとなった出来事でしたが、アンチも多い松坂へは、元々負傷していたことの言い訳ではないか、という意見も出るようになります。
そして5月には、練習日にゴルフに行っていたことが判明し、さらにバッシングを受けることになります。関東で治療し、個人でトレーニングをした後でのゴルフということで、擁護する声もありましたが、大多数はバッシング。
結局、この年は2試合5.1回10失点(1敗)と散々な結果に終わってしまいました。
そしてオフには、自信をドラゴンズに誘ってくれた森、デニーがドラゴンズを去ることになり、松坂も退団することとなります。
そして、2020年は古巣埼玉西武ライオンズに復帰することになりました。
現役の終わりが近づく中で
ライオンズを放出されれば、おそらく獲得する球団はもうないでしょう。肩の調子が良かったとしても、2018年のような5回100球程度の運用が限度と考えると、先発が揃っているチームでは起用される機会はほぼないと考えると、ライオンズは古巣という意味でも先発陣に不安があるチーム事情と言う意味でも、今の松坂が所属するには最高の球団です。逆に言うと、ライオンズでダメだったらもう他は無いと言うことです。
いちライオンズファンとしては、怪我が治らずにひっそりと消えていってしまうのではなく、最後にもう一度、ライオンズで一花咲かせてから引退して欲しい、という思いでいっぱいです。
“平成の怪物”の現役生活最終章を期待したいと思います。
*1:松坂キャッチボール再開 「確実に良くなっている」https://www.nishinippon.co.jp/nsp/item/n/164344/
*2:松坂大輔「去年の10月、ある施設で 先生が肩をはめてくれたんです」https://sportiva.shueisha.co.jp/clm/baseball/npb/2018/03/13/10___split/
*3:松坂、右肩手術で今季絶望 ソフトBで1軍登板なしhttps://www.nishinippon.co.jp/nsp/item/o/189340/
*4:松坂、福岡離れ関東の施設で治療 右肩付近の不調でhttps://www.nishinippon.co.jp/nsp/item/n/321585/
*5:なぜ中日ドラゴンズは松坂大輔を「救世主」として獲得したのかhttps://www.itmedia.co.jp/business/articles/1803/23/news029.html